2009年10月7日水曜日

関連演習#01

※以下は言うまでもなく無断転載である。情報の取り扱いに関しては、各自ワイルドキャットに対応されたし。なお、参考文献中に言及される佐藤真氏の著作はこの6月に合本復刊(「愛蔵版」)されている。

開講年度 2009年度
科目名 表現・芸術系(後期)演習23
学期曜日時限 後期 01:木7時限
担当教員 藤井仁子
開講箇所 第二文学部
配当年次 2年以上
科目区分 表現・芸術系
単位数 2
使用教室 01:32-224
キャンパス 戸山

副題
記録映画作家・土本典昭を見る
講義概要
昨年亡くなった土本典昭(1928-2008)は、戦後日本を代表する記録映画作家であったのみならず、世界映画史に燦然と輝く偉大な映画作家の一人でした。わけても水俣の「患者さんとその世界」にキャメラを向けつづけたことで知られる土本にとって、映画は対象となった人々や観客と一緒になって考えるための「道具」でしかなかったのですが、にもかかわらずその作品は、今なお土本本人の意図さえ超えて映画としての輝きを増すばかりであり、その輝きこそが今日土本作品を見るわれわれを真の〈政治〉に向けて挑発してやみません。複製芸術としての映画の真の可能性は、〈見る〉という孤独で直接性を欠いた営みに徹してこそ初めて開かれるものではないでしょうか。
本演習では、こうした観点から土本典昭の代表作を関連テクストを読みつつ製作順にたどり、発表担当者の問題提起を受け、議論を重ねることで、映画を〈撮ること〉と〈見ること〉の根源的な倫理を問いなおしてみようと思います。したがって、充実した授業とするためには、受講生一人一人の自発的な参加が不可欠となります。

シラバス(授業計画)
[第1回]ガイダンス(資料配布、発表順の決定など);『水俣病=その20年=』──参考上映、解説、討議
[第2回]岩波映画と「青の会」──解説、討議
[第3回]『ある機関助士』──参考上映、解説、討議
[第4回]『ドキュメント路上』──参考上映、解説、討議
[第5回]『水俣の子は生きている』──参考上映、解説、討議
[第6回]土本典昭と「ルーペ論争」──解説、討議
[第7回]『水俣─患者さんとその世界─』(1)──参考上映、解説、討議
[第8回]『水俣─患者さんとその世界─』(2)──参考上映、解説、討議(つづき)
[第9回]中村秀之『水俣─患者さんとその世界─』論(1)──発表と討議
[第10回]中村秀之『水俣─患者さんとその世界─』論(2)──発表と討議(つづき)
[第11回]『水俣一揆─一生を問う人びと─』(1)──参考上映、解説、討議
[第12回]『水俣一揆─一生を問う人びと─』(2)──参考上映、解説、討議(つづき)
[第13回]『不知火海』(1)──参考上映、解説、討議
[第14回]『不知火海』(2)──参考上映、解説、討議(つづき)
[第15回]『わが街わが青春─石川さゆり水俣熱唱─』──参考上映、解説、討議;全体のまとめ

教科書
土本典昭・石坂健治『ドキュメンタリーの海へ──記録映画作家・土本典昭との対話』(現代書館、2008年、3600円+税)。
参考文献
上記教科書とともに、土本典昭『映画は生きものの仕事である』新装版(未來社)はぜひとも読まれるべきです。他の文献は適宜紹介しますが、さしあたり以下を推奨します。『映画芸術』425号(2008年)〈特集 土本典昭の映画史〉、佐藤真『ドキュメンタリー映画の地平』上・下(凱風社)、村山匡一郎編『映画は世界を記録する』(森話社)。
成績評価方法
出席を重視し、発表の出来、討論での発言を加味して総合的に評価します。発表しなかった場合、発表時に無断欠席した場合は単位を与えません。授業期間中に関連作品の上映が行なわれる場合など、適宜レポートの提出を求め、出来に応じて加点することも考えています。
備考
映画にかんする予備知識は必ずしも求めませんが、じっくり腰を据えて見る手間を惜しみ、ただ「社会問題」を語りあいたいだけの人には他にもっと適当な授業があるでしょう。

https://www.wnz.waseda.jp/syllabus/epj3041.htm?pKey=1400153B230120091400153B2314